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隠れた名品・隠れた名匠
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    取材のために、家具デザイナーの中村昇さんを訪ねた。

    中村さんは札幌在住で、家具のプロダクトデザインを専門にされている大ベテランだ。私の尊敬するデザインの大先輩でもある。

    旭川のカンディハウス(旧インテリアセンター)からも、数々の家具シリーズを発表しているが、なんと言っても中村さんの代表作は、スウェーデンのIKEAを代表する椅子『POANG(ポエング)』。

    今回はこの世界的ロングセラーのお話を伺うのが目的。興味深いお話を沢山聞くことができた。

    ポエングが発売されたのは、今からちょうど30年前の1977年。
    70年代初頭、スウェーデンで木工とデザインを勉強された中村さんがその卒業制作をIKEAに持ち込んだ。その作品は結局採用されなかったのだが、半年後にIKEAに入らないかと連絡があり、晴れて日本人初の社内デザイナーとなった。

    IKEAに在籍中の6年間に100以上のデザインをして、そのうち29が商品化。ほぼ3割バッターである。その中には、ポエングをはじめ今でもずっと販売されているソファKLIPPANもある。

    ポエングは発売した初年度で2万脚を売る大ヒットになり、累計ではこの30年間ではおそらくミリオンの数にのぼっているのではないだろうか。コピー商品も30を越える(らしい)。
    今見ると普通に映るかもしれないが、それは気にすることがなくても知らず知らずに目にする機会が結果として多かったから、ということかもしれない。

    ボエングが他の競合を引き離して生き残ったその理由は?と聞くと、デザインや座り心地はもちろんのこと、一つにはターゲットを絞ったIKEAの戦略、そして価格、カバーリングを外して洗濯できるという当時としては画期的なアイデア…などなど、
    つまりは色々な要素がピタッとはまったバランスの良いプロダクトだったということだろう。
    とは言ってもそれは決してまぐれ当たりではなく、やはり作り手の思いがたっぷり詰まった成果。よき仲間に恵まれたとはいえ、異国の地で1人で頑張っていた中村青年の姿を想像すると胸が熱くなります。

    当時の貴重なスケッチの数々を拝見。
    A4大のノートに、デザインのアイデアや丁寧に彩色されたパースがびっしりと描かれている。どれもよく練られ細部まで考えられたフレッシュなアイデアや形ばかり。とにかく、描いている量もすごい。上手いし。

    椅子のデザインなんて出尽くしてますよー、なんていうのはウソ。ものの形は無限にある訳だから、出尽くすなんてことはない。それは言い訳だよなー、と若き中村さんのスケッチブックを見てそう思った。それに比べたら、私ぜんぜん仕事してないです(反省)。

    そんな素晴らしいお仕事を残されているにもかかわらず、中村さんはとても謙虚な方だ。
    「金の斧?銀の斧?」と聞かれたら絶対「普通の斧です」とお答えになりそうな。

    控えめで、決して声高に主張することなく、誠実で丁寧でやさしいラインの家具。それは中村さんのお人柄の印象そのもの。
    いつか中村さんのお仕事をもっと多くの方に紹介できる機会ができればいいなぁと思っている。でも中村さん、きっと嫌がるだろうなぁ…。

    | chiori66 | 01:20 | comments(6) | trackbacks(0) | - | - |
    Comment
    中村先生・・・本当に作品にも心の優しさが顕れた方ですよね。私も大好きなデザイナーさんです(^^)。
    でも、伊藤さんの栗の木通信のデザインに関するお話もいつも感動します。
    わ!!!こんなに真正面から向き合って物事を考えているんだな〜と驚きます。
    私も、もっとしっかり仕事と向き合って行かないと・・・チョット最近現実から目を逸らし気味なoteです・・・。
    伊藤さんカツ入れてください!
    Posted by: ote |at: 2007/09/21 1:39 PM
    カ〜〜〜ツ!…入れてみました(笑)
    ほんとにデザインって人柄がでますね。中村さんのデザインは優しくて誠実ですよね。

    そして過分なるお言葉、ありがとうございます。
    でも私のはかなり不実!口ばっかりですから、だまされませぬよう!
    く(^3^)へ
    Posted by: c-ito |at: 2007/09/23 2:22 AM
    先日の中村さんに関する伊藤さんの新聞の記事を読み、興味深かったので検索してみたところ、このブログにヒットしました。
    ロンドンから数年ぶりに帰国したのですが、記事をきっかけに中村さんのサイトを見つけたり、故郷の旭川が家具の街であることを知ったり、北海道の家具が世界に発信されていることを嬉しく思いました。

    Posted by: Aoi |at: 2007/10/23 11:41 AM
    Aoiさん、コメントありがとうございます!
    そして新聞記事からの検索とのこと。興味を持っていただけてとても嬉しいです。

    中村さんは旭川の家具メーカー、カンディハウスからもロングセラーの商品を数多く発表されています。

    旭川は家具の製造では技術的にはとても高いんですよ。
    意外と北海道民には知られていなかったりするんですけど…。

    ロンドンも今デザインでは旬な都市の一つですよね。
    インディーズ的なデザイナーの活動が盛んで、遠くから見ていても刺激になります。
    北海道もそんな風になればいいなぁ、と思っています。

    まだ札幌に滞在中でしたら、札幌デザインウィークの方にもぜひ遊びにいらしてくださいね。

    またのコメント、お待ちしております♪
    Posted by: c-ito |at: 2007/10/27 11:34 AM
    IKEAで検索して遊びにきました^^

    この記事、とっても感じ入りました。。。
    改めて、ポエングにもう一度座りたくなりました。

    過去ログ少しだけ読ませていただいたのですが、
    とっても、ものづくりへのピュアな気持ちに溢れていて、
    ステキだなぁと思いました^^

    私も、デザインの世界の端くれにいるので、
    栗の木通信から、時々刺激をいただきにきますね^^
    よろしくおねがいします♪
    Posted by: Arinco☆ |at: 2007/11/19 12:50 PM
    Arinco☆さん、レスが遅くなってごめんなさい。
    デザインのお仕事されているんですね。
    外から見るよりもずっと地味でビンボーなデザイン業ですが(笑)、
    好きなことを仕事にできて、ものを作る楽しさもあるなんて、
    罰当たりなくらい幸せだわ〜と思う今日この頃です。

    ぜひぜひたびたび遊びに来てください。全然更新してませんけど!
    Posted by: c-ito |at: 2007/12/03 3:02 AM








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